補聴器を買うお話1

補聴器を買うおっさんの独り言

  • ※本記事は、前庭水管拡大症・ペンドレッド症候群の当事者である一ユーザーが、自身の生活実感に基づいて執筆したものです。 記載されている製品の性能や価格に関する情報は、執筆時点での個人の調査および主観に基づくものであり、メーカー公式の見解や医学的根拠を保証するものではありません。あらかじめご了承ください。
  • ※当会では、特定のメーカーを推奨するものではありませんが、こうしたユーザーの生の声が、これからの聴覚支援技術の発展や普及に繋がることを願っています。

現在、オーティコン社の補聴器、Opn1を両耳装用している。

このOpn1、2018年頭に購入したもので、耐用年数はとっくに過ぎており右耳の方の出力がかなり弱っている。

つい先日、家族とマリカーパーティ(マリオカートで勝負だ祭り)をしていた時のこと、妻が突然「かたとんとん」と言っているので何ごとかとよくよく聞いたら「パタテンテン」というキャラクターのことだった。そして、更に別の日のこと、皿洗いをしていたら突然悲鳴が聞こえたのでびっくりして顔を上げたら、ジッパーを上げる音だった。それ、悲鳴に聞こえるねと妻に言ったらそんなわけないとヤレヤレ顔されてしまった。

そんなこんなで、私の貧弱なコミュニケーション能力はさらに悪化しつつあるようだ。

これは一大事である。

そうだ、補聴器を買い替えよう。

そこで補聴器について調べ始めると、様々なメーカーが製品を出しており、それぞれに違った設計が見られることがわかった。

しかも補聴器は近年飛躍的な進化を見せており、驚くことにAIが搭載されている製品が主流となっていた。前回購入した2018年頃はAIなんてまだまだ夢物語だったのに。

今回購入するとしたら、それはもう是非ともAI導入のタイプを選びたいものだ。

どんな補聴器があるのかな

購入候補としているブランドを下記にまとめてみた。

オーティコン 360°自然に

https://www.oticon.co.jp

オーティコンはデンマークのデマント社による製品、補聴器シェア世界第二位だとか。全方位360°の音を自然に無理なく耳に届ける「ブレインヒアリング」をコンセプトにしている。これはOpn1の発売当時に大々的にPRされたコンセプトで今もこれは変わっていない。今までの補聴器はいかに要らない音を削除するかにフォーカスしてきたが、そこから脱却し、全ての音を拾うことで自然な音環境を再現、脳の活性化を促すとか、そんな感じのコンセプト。音は耳が聞いているんじゃない、脳が聞いているんだ!っていう感じ。「踊るなんちゃら」でも同じ様なセリフがあったかな。最新機種ではAIによるモーションセンサーを導入、装着者の動きを察知し、何の音を聞こうとしているのかを判断し、その音を聞きやすくデジタル処理する。

フォナック 強力なAI

https://www.phonak.com/ja-jp

フォナックはスイスソノヴァ社の製品である。スイスと言えばスイス時計に象徴されるような精密なマイクロメカニクスと高度なデジタルシステムのイメージ。事実、フォナックの補聴器は今世界ナンバーワンのシェアを誇っておりとってもイケイケだ。フォナックが発表している最新の補聴器「インフィニオ」はコンセプトとして「AIによってあらゆる環境下で雑音を低減」といった感じを提唱している。

フォナックについて調べていると、とある動画に行き着いた。その動画はフォナック社の公式チャンネルがYoutubeに公開しているもので、自社の製品がいかに雑音を抑えているかをアピールするためのものだ。動画の中でマネキンが登場する。そのマネキンは補聴器を装用することができ、その音を録音出来る仕組みだ。動画ではマネキンに前述のインフィニオを装着し、ガヤガヤとうるさい環境下での聞こえ方を検証していた。

その結果に私は驚いた。

マネキンの前にプレゼンターが二人、何か喋っているがどこかのレストランらしくガヤガヤとうるさく二人の声は良く聞き取れない。そして、「AIを入れてみましょう!(字幕)」とプレゼンターが言った瞬間、周りのガヤガヤはスーッと消え、プレゼンターの声が明瞭になった。驚くべきことだ。これが事実なら本当に素晴らしい。

シグニア とにかくおしゃれ

https://www.signia.net/ja-jp

シグニアはデンマークのWSオーディオロジー社の製品である。元々はドイツのシーメンス社の製品だったが、その後デンマークのワイデックス社と統合し社名変更となっている。ややこしいが製品の中身についてはドイツ企業に依るところが大きいとのこと。ドイツと言えばドイツ車、全世界を席巻する日本車にも埋もれず、ドイツ車は大人気だ。そして技術の粋が詰まった革新的な精密機器類もこれはドイツ製だと言われればそれはそうかと納得してしまう確固たるブランドイメージ。

シグニア補聴器も当然ながらAI戦略を展開している。シグニアのアプローチは「音の洪水の中でも、声をリアルタイムで追跡し、輪郭を際立たせる」ということだそうな。周囲のライブ感は残しつつ声を際立たせるというアプローチ。オーティコンと似ている気もするが、オーティコンは聞こえやすくした上で全てを耳に届ける、というアプローチであり、シグニアは雑音を抑えつつ複数人の会話があったとしてもそれらを抑制しないということだと理解した。

そしてシグニアの補聴器はおしゃれだ。これは補聴器ではなく、ファッションアイテムですよとアピールしても差し支えないぐらいおしゃれな印象。ツートンカラーのモデルもある。

リオネット 国産!

https://www.rionet.jp

メイドインジャパン!みんな大好き純国産!リオネットは日本のリオン社が提供している。

ただ、革新的な進化を続ける海外メーカーの製品に注目が行き勝ちな補聴器界隈、IT分野と同じように海外勢力に押され気味な印象は否めない。

だが、リオネットには国産ならではの強みがある。それは日本の福祉業界に強力に絡み合っていること。国内医療機関に検査機械を置くのも日本の福祉医療と共に成長を続けてきたリオン社が強い。そして、国産ならではの特徴として、リオネット製品は「日本語の聴取が得意」ということ。そもそも日本語と海外の言語では発音の仕組みが全く異なる。具体的には「母音」と「子音」の組み合わせ方に大きな違いが見られるそうだ。例えば英語の「system」、これ英語話者が喋るとほぼ子音のみ。母音をあまり感じない。だが、日本語は母音をふくよかに発音しないと聞き取りづらい言語なのだとか。そこの違いは補聴器の設計にも現れる。リオネットにもAIを搭載した「マキシエンス」が発表されている。海外メーカーのAIは子音主流の言語に最適化されているが、このマキシエンスは日本語をメインとして母音を守る学習がなされている。更には日本の高温多湿な環境に強いと言われているのもリオネットだ。

そう考えると、どうせ英語なんか話せない聞き取れない、じめじめしたおっさんの私なんぞ、リオネットが実は一番ぴったりなのかも知れないと思い始めてきた。

さて、結局何がいいのだろうか…。

世界でのシェアナンバー1とナンバー2を誇るフォナック社とオーティコン社とでは、補聴器の設計に関する基本的な方針が真逆だ。

オーティコンは360°全ての音を拾い全て届けるというコンセプト。フォナックはあらゆる環境において言葉を明瞭にするため背景の雑音をAIが強力に抑える。

そして、上記2ブランドを追随する位置にいるシグニアは複数人が会話している中でもそれぞれの声を際立たせることが得意である。

リオネットは日本語の処理に特化したAIで日本語話者に最適な設定となっている。

その他にもアメリカのスターキー、デンマークのリサウンドなど様々なメーカーがこのAI台頭時代における補聴器開発に勤しんでいる。

その中で私の耳に装着を許されるのはたったの一社である。

補聴器を複数個持つ余裕なんぞ私にはないのだ。さあ、世界の猛者たちよ、私の耳穴目指して奮闘するが良い!

と何かが始まってしまった。楽しくなってきた。

そうだ、妻ちゃんに相談しなきゃ。

早速値段を調べてみたところ、海外メーカーに関しては最上位モデルで片耳70万円、両耳装用で実に140万円掛かると判明。リオネットは国内での普及を目指すために価格を抑え両耳で100万円程である。

という訳で、なるべくイケボを心掛けながら妻に相談してみた。

なぁ、なぁ、妻ちゃんよぉ。
補聴器が調子悪いから買い替えたいんだ。俺が聞こえなくて落ち込んでいるぐらいなら、100万なんて安いもんだろ?
な?
な?

すると妻はニコニコ笑いながら

妻ちゃん

…5年で買い替えなきゃいけないって分かってたんだよな?
なぁ?
それに向けて少しでも貯金してたんか?
あぁ?

と言ってきた。

果たして新しい補聴器を買える日が来るのだろうか。

ひとまずいつもお世話になっている補聴器屋さんに相談予約を入れた。