おっさん、補聴器を買う5「Rionet リオネット2」を試聴
補聴器を買うおっさんの独り言
- ※本記事は、前庭水管拡大症・ペンドレッド症候群の当事者である一ユーザーが、自身の生活実感に基づいて執筆したものです。 記載されている製品の性能や価格に関する情報は、執筆時点での個人の調査および主観に基づくものであり、メーカー公式の見解や医学的根拠を保証するものではありません。あらかじめご了承ください。
- ※当会では、特定のメーカーを推奨するものではありませんが、こうしたユーザーの生の声が、これからの聴覚支援技術の発展や普及に繋がることを願っています。
いよいよ来ました。国産補聴器の代表格、リオン社のリオネット!
子供の頃から成人するまでずーっとリオネットを装着していた私、この世の補聴器はリオネットしかないとさえ思い込んでいた。実家の引き出しを開ければ、そこには歴代リオネットがズラリと並んでいる。大きめのボックス型補聴器、小型のボックス型、肌色の耳掛け、そして耳穴式へと、それはあたかも補聴器の進歩をなぞらえるかの様だ。
いったい、生涯においてどれだけリオネットに出費して来たのだろうか。いや、親がね。
それはさておき、実際のところ私はそこまで国産リオネットを愛でているわけでもなく、途中から海外製の補聴器に鞍替えしている。スマホと連携することが可能な補聴器を海外メーカーが発表したからだ。Oticonアクトプロである。正確にはストリーマーという中継機が必要であったが、ストリーマーを用いる事で補聴器がただの補聴器ではなくなり、ヘッドホンとして機能したのだ。ガジェット好きの私としてはiPhoneが登場して以来の衝撃的な出来事であった。飛びつかない理由がない。
今回、10数年ぶりにリオネットを試聴してみようと思い立ったのは、AI搭載「リオネット2マキシエンス」が登場したからである。
さて、リオネットの製品群は残念ながら私の行きつけの補聴器屋では取り扱いがなく、「リオネットセンター」でのみ取り扱っている。そこでさっそく公式サイトでアポを入れリオネットセンターに訪問すると、既に準備済みで聴力検査をすればすぐに借りられる状態になっていた。とてもシゴデキである。
国産初!AI搭載モデル!
リオネット2は国産として初めてAIを搭載した補聴器で、リオン社が提供するブランド「リオネット」の旗艦モデルである。

そして、リオネット製品群にはクラス分けとして下記のクラス名を用いている。
- マキシエンス
- マキシエンスV
- プレミエンス
- プレミエンスV
- クオリエンス
なんだかアベンジャーズ感が強くかっけーってなる。それはともかく一番上が最上位クラスで、下に行く程に機能が限定されていく。ただし、国産初のAIが搭載されているクラスはマキシエンスとマキシエンスVのみである。ちなみに「V」は何の略なのか明確な情報が見つけられないが、「上位機の思想を残しつつ、機能・性能・価格を調整したモデル」という位置づけらしい。
リオネット2は耳掛け式(RIC:レシーバーインカナル)と耳あな式(ITC:インザカナル)の2つを展開しており、好みで選択可能だ。
小型化された耳穴式は機能が限定されているのかと思ったが、カタログ上の数値では特に大きな違いは見当たらない。唯一バッテリー持続時間に明確な違いが見られ、耳あな式の方が持続時間が短い。
詳しくは公式で確認して欲しい。
https://www.rionet.jp/rionet2/products
リオネット製品群は、この様に一つのモデルの中でも耳掛け式(RIC)と耳あな式(ITC)が選べるが、海外勢の製品の場合は別モデルとなり名称も変わってくるのが面白いところだ。みなさんご存知IKEAでもそれに近いことを感じることだろう。「◯◯シリーズのベッド、イス、机」という分類ではなく、製品それぞれに名前が付されている。個を中心に据えるという考え方からその様になるのだろうか。そのため、日本式の考え方のままで海外製品を見ると混乱を生じる場合がある。私なんぞ、存在しないのに「Oticonインテントに耳穴式タイプはないのか?」とついつい探してしまった。要注意である。
日本語に最適化された補聴器
さて、AIを搭載した補聴器がなにかと取り沙汰されがちな昨今であるが、その中でも国産のAI補聴器は「日本語の聴取に最適な設定になっている」というところが大きなポイントだ。
日本語は母音が多く、子音の変化が比較的繊細な言語であるとのことで、単純に音量を上げるだけでは言葉の聞き取りは改善しにくい。リオンは長年、日本人の聴覚特性や言語環境に向き合ってきたメーカーであり、その知見がリオネット2にしっかりと反映されている。
例えば、日本語の聞き取りに重要な周波数帯域や音のバランスを考慮した補聴技術「SSS:Speech Sound Support(スピーチ・サウンド・サポート:日本語の言葉の聞き取りやすさに着目して開発されたリオン独自の補聴技術)」などにより、言葉の輪郭をより明瞭に捉えやすくしている。
さらに、リオネット2はAIを活用し、さまざまな音環境を学習。騒音下でも会話音声を優先的に捉えることで、実際の生活場面で「何を言っているのかが分かる」聞こえを実現しているそうだ。
ただ単に高性能というだけでなく、日本語という言語そのものに最適化されている点こそが、リオネット2の大きな強みと言えるだろう。
詳しくは下記のリンク先に開発者たちのインタビュー記事が掲載されているので興味があったら読んでみて欲しい。
ここで残念なお知らせ
補聴器の性能をフルに発揮させるためにはフィッティングという行程が非常に重要である。
ここまでリオネット推し感の強い当記事を読まれた方、さぞかしリオネット2に大きな期待を寄せておられることだろう。
だが、残念なことに、今回の試聴はフィッティングが適切ではなく、リオネット2の本来の性能を十分に享受することが出来なかった。
聞こえの状態を伝えながら調整を進めてもらったが、なかなか自分の感覚とは一致しなかったのだ。
そしてとうとう、通常のイヤモールドでは対処できないという話になり、オプションのEXパワーイヤホンを搭載するという流れになってしまった。

色々言いたかったが、その場では調整を重ねたものの、自分の感覚との一致が得られず、その状態で試聴機を借り受けることになった。
AIや音質については何も言えない
残念ながら、正確なフィッティングが成されていない可能性がある以上、AIがどの様に処理するのか、音質はどうかの言及は避けるべきだ。今回、リオネット2の本来の機能を確認することは出来なかった。じゃあこの記事書かなくてもいいじゃん、って言われそうだが、フィッティングに影響されない機能面についての評価は可能なので、その点を記事にしようかと。
左右の連携が課題
リオネット2を装着してすぐに気付いた点がある。それは右と左が音空間を連携していない、ということ。
車を運転している際、右側の補聴器のみロードノイズに反応し、AIが即座にノイズを消し去ってくれたが、左側の補聴器は何も反応しなかった。右と左の音空間が連携されず、個々でAIが反応しているのだ。
帰宅後に家族との会話でも装着してみたが、やはり右と左が連携されず個々に補正が掛かる。
キッチンの換気扇の下に立つと、片側だけがその雑音に反応することもあった。
補聴器の音空間について、左右差を埋めることは非常に重要だなーと私は考えている。
例えばOticon社では左右の補聴器を通信させるために、「NFMI(Near-Field Magnetic Induction)」という技術を使い、左右の補聴器間で1秒間に数百回という膨大な音声データのやり取りを行っている。左右の補聴器が互いの音量差(ILD)や到達時間差(ITD)をリアルタイムで突き合わせ、これにより脳が「音の方向」や「距離感」を正確に把握できるよう、音のコントラストを維持しているとのこと。右で「ノイズ」と判断された音が、左でも同時に「ノイズ」として最適に処理される。左右の補聴器がバラバラに判断を下さないため、「空間が繋がっていない」という違和感が起こりにくい。
そこで、しっかり者の私はリオン社に両耳間連携について問い合わせてみた。
するとやはり私の感覚は正しく、左右の補聴器がそれぞれ独自に音環境に対する反応を返し、両耳間連携については音量調整やプログラム変更などの信号のみを共有しているとのこと。
左右の音環境が連携されないというのはどういう事か。
例えば、右側から緊急車両のサイレンが鳴ったとする、そしてそのサイレンを右側補聴器のAIが雑音として処理し、音量を絞るとどうなるか。サイレンが左の遠くの方から聞こえてくることになる。聞こえの方向が逆になり距離感も変わってしまうのだ。右側で雑音として処理したなら、左側も雑音として処理して欲しいのだ。
AIの恩恵により補聴器はより一層雑音抑制が得意になってきている。そのため、尚更、両耳間の連携が重要になってきているのではないだろうか。
鍵束の音が聞こえる
そんな中、リオネット2装着時に久しぶりに聞く音があった。
鍵束の音だ。
私の長年の相棒、Oticonオープン1は鍵束の音やポケットの小銭の音を届けてくれなかった。というのも、高音域はほぼスケールアウトに近いため、高音域を最大限調整したとしても鍵束や鈴、風鈴の音など聞こえた試しがない。
リオネット2試聴時、やたらチャリチャリと音が聞こえたので、何事だ!と辺りをキョロキョロ見回したところ、その音の正体に気づき私は驚いた。手に持っている鍵束から音がしている!と。もちろん、それらから音が出ていることは知っているが、こんなに聞こえているものだとは思っても居なかった。
試しに数メートル離れている息子に、鍵束をちゃらつかせ、この音聞こえる?と聞くと、Switchの画面から目をそらさず、聞こえるよ!と面倒くさそうに答えてくれる。なんだ生意気な坊やだなと思いつつ、今度はキッチンの換気扇を回し、その下でちゃらつかせる。聞こえるよ!と生意気坊やは答えてくれた。
この音ってこんなに響いているの?と私は驚く。
ガラスが触れる音、小銭の音、しずくが垂れる音、そうか世界はこんなささやかな音で満ちているのか。しばし私はその音を楽しんだ。
オーティコンやフォナックの試聴時には気づかなかった音だが、これはフィッティングにより解決する可能性があるため要注意情報である。
物理的スイッチがない
リオネット2には耳掛けタイプ(RIC)も耳穴タイプ(ITC)も物理的なスイッチが一切ない。
スイッチがない利点としては、防水・防塵性能の向上、コンパクト化、デザイン性の向上が挙げられる。
では音量調整やプログラム変更をどうするかと言うと、それはスマホの専用アプリ「Smart Control2」で操作する方法と、別売りのリモコンで操作する方法がある。

これは私としては結構困り地味にストレスを感じる。状況に応じて音量調整を頻繁に行うことが多いからだ。仕事で集中したい時に同僚の電話の声が大きかったり、車内やショッピングモールなどで雑音を抑えたいとき、私は頻繁に音量を下げる。そんな時にいちいちスマホを開いてアプリ開いてなんてちんたらやってられないのだ。別売りリモコンを購入し操作する方法もあるが、補聴器をウェアラブルデバイスとして捉えている私個人の考えとしては、デバイスの制御にいちいちリモコンを更に携帯するのは非常にまどろっこしく感じてしまう。
次世代Bluetooth LE対応
補聴器がウェアラブルデバイスとして機能するためには、スマートフォンやその他の様々な機種といかに連携するかが重要になる。
リオネット2は次世代通信規格Bluetooth LE(Low Energy)Audioによる通信を実現している。
Bluetooth LE Audioは、超低消費電力を実現し、今まで1対1でしかできなかったペアリングが、複数機種に対応できるようになっている。

そして私自身本当に楽しみにしているのが、Bluetooth LE Audioによって体験できる「Auracast」だ。駅や、空港、バス等の公共インフラでのアナウンス、博物館や美術館での解説音声、病院での呼び出し、それらがAuracastにより直接補聴器に流れるようになる。この技術により利便性の獲得は補聴器ユーザーとしても計り知れない程に生活の質が向上するものと期待されている。ただ、このAuracastはまだ始まったばかりの技術につき、実際に公共インフラで提供される時期は2.3年後になるとされている。
グッドデザイン賞受賞
リオネット2はグッドデザイン賞を受賞している。
調べたらリオネット2の開発はパナソニックと共同で行われ、デザインはプロダクトデザイナーの柴田文江氏によるものだとか。
そう言われてしまうと、良いデザインに見えてくるから不思議なものだ。おっさんは権威や実績をちらつかせられると弱い。
借りたリオネット2の色は「アッシュブラウン」で、流行っているソリッドカラー(単色、あえてメタルやラメなどを入れない仕様)で仕上げてあり、なかなかおしゃれだと感じた。
ただ、大きさはというと、私の耳輪から遠慮なくはみ出してくれる。AIとバッテーリーを搭載すると、どうしても大きくなってしまうのだ。

ちなみにリオネット2は、パナソニック補聴器で「R5シリーズ」として販売している。ただ、パナソニックの方のモデルにはAIが搭載されていない模様。
補聴器は長い間その用途から「隠すモノ」とされ、肌色が基本であった。
だが、昨今はおしゃれな補聴器も増えてきている。隠すモノから、見せるモノへと、補聴器がメガネ同様おしゃれアイテムに変わる日も近い。
UIについて語りたい
UI(ユーザーインタフェース)について少々語りたい。これはスマホにインストールするアプリの見た目のことである。UIは企業のブランディングに包括されるというのは言うまでもなく、補聴器を操作するために日常的に眺めることになるアプリのデザイン性は非常に重要だと考えている。
海外勢のUIはどうだろうか。Phonakのアプリ「myPhonak」のUIはロゴの配色に合わせグリーンとグレーで構成されている。

Oticonのアプリ「Oticon Companion」も同様にロゴに合わせてピンクとグレーで配色されている。

これは、これらの企業がブランディングを重視しており、自社製品のブランドイメージを明確に打ち出そうと努力している証左とも言える。
リオネットはどうだろうか。

通常、補聴器は慣習的に右側が赤色、左が青色で表現されるが、その色分けがリオネットのアプリ「SmartControl2」上でも表現されており、割とビビッドな色味で赤と青が画面に並んでいる。リオネットのブランドカラーは恐らくロゴと一緒のちょっと暗い青かと思うが、UI上の青とは一致していない。これは、ブランディングよりも幅広い年齢層に向けて使い勝手を重視した結果とも言えるだろう。
だが、人は「どこの層をターゲットにしているか」を瞬時にUIを見て判断する。たかがUIといえども、それはブランドイメージに直結すると私は考えている。福祉的なイメージなのか、先進的なイメージなのか。
補聴器が福祉的なイメージから脱却することで、今まで見向きもしなかったユーザー層が反応するようになれば、補聴器界隈も活性化され、補聴器ヘビーユーザーの私としても大助かりなのだ。
これは私個人の考えであるが、企業のブランドイメージ構築のベクトルを見直せば、「憧れのかっこいいリオネットを手に入れたい!」と補聴器界隈がにぎやかになるはずだ。
まとめ
今回の試聴ではリオネット2の本気を体感することは叶わなかったが、それでもAIの反応の良さは体感できた。運転中、ロードノイズに即座に反応したのは評価したく、Phonakインフィニオで体感した様な素早い反応に近かった。これでフィッティングが完璧であれば良い結果が得られるだろう。
だが、左右で音環境の連携がされないという設計思想に関しては評価がわかれると感じる。左右それぞれのAIが好き勝手に音環境を提案してくれる状況には人によっては違和感があるだろう。左右がっちり見事な連携技をキメてくれるなら良いのに、と思うのはOticonユーザーだからだろうか。
今回の試聴機を返却の際、再度音調整を試みてもらったが、なかなか良い結果は得られなかった。改めてフィッティングの重要性を再認識しリオネットセンターを後にした。
おっさんは同情されない
最近気づいた。おっさんは世界一同情されにくい生き物だということに。
おっさんは自分で何とかするものだし、むしろ他者に何かを施すのが当たり前だと、そんな理不尽な扱いを受けている生き物である。
だからよっぽどの事が無い限り、体の不調はあまり同情されない。
難聴だってそうだ。
小さな子の難聴に対しては同情も多く寄せられるが、おっさんの難聴なんぞ珍しくもなく「耳が聞こえないんだよぉ、補聴器を買いたいよぉ」とおっさんが喚いたとしても、自分で勝手にしろや!と言われるのがオチだ。まあ、そりゃそうだ。
それならポーンと大人の財力で100万の補聴器買っちゃう?と行きたいところだが、生憎と我が家のおサイフは妻ちゃんのものだ。
そして、我が家のこれからの大きな出費として、下記がある。
- 車の買い替え
- 洗濯機の買い替え
- 住宅ローン繰り上げ返済
- 息子の歯列矯正
そして、どうでもいいかも知れないが、我が家のパワーバランスは下図の様になっている。
妻ちゃん & チャコ(獣) > 息子 > 私
この状況で100万の高価な補聴器を買ってもらおうなんて要求が果たして通るだろうか。恐らく無理に決まっている。
そこで私は作戦を考えた。
このパワーバランスの中で、私がトップになればいいのだ。
私 > 妻ちゃん > 息子 > チャコ(獣)
これだ、こうなれば自由に補聴器が買えるではないか。
しかし、ここで言うトップとはどの様なものだろうか。リーダーのことだろうか。社長?監督?いや大統領?・・・改めて意識すると世間にはあらゆるトップの形があることに気付かされる。
あまり大きなトップを意識しても仕方ないから、ぐっと身近なトップを参考にした方が良さそうだ。そうだ、市長あたりのイメージでやってみようか。
私はそう考え、さっそく市長になる方法を調べてみた。
すると、「選挙に選ばれること」とあった。
なるほど!選挙か。その手があった。

あの、、、えっと、、、みなさん!
選挙やりますよ!
この家のトップを決めますよ!

・・・・

・・・・

・・・・

じゃ、じゃあ私がトップでいいって人!

・・・・

・・・・

・・・・

じゃあ、、妻ちゃんがいいって人。。

やりまーす

はーい

にゃー

えーと妻ちゃんがトップです。。
果たして、補聴器を買える日が来るのだろうか。。。
次回は「フィッティングの重要性」について語れたらいいな。