おっさん、補聴器を買う3「Oticonインテント」を試聴

補聴器を買うおっさんの独り言

  • ※本記事は、前庭水管拡大症・ペンドレッド症候群の当事者である一ユーザーが、自身の生活実感に基づいて執筆したものです。 記載されている製品の性能や価格に関する情報は、執筆時点での個人の調査および主観に基づくものであり、メーカー公式の見解や医学的根拠を保証するものではありません。あらかじめご了承ください。
  • ※当会では、特定のメーカーを推奨するものではありませんが、こうしたユーザーの生の声が、これからの聴覚支援技術の発展や普及に繋がることを願っています。

花粉のシーズンである。

この時期になると、私の鼻はピーピーと鳴り始める…らしい。

らしい、というのも、実は自分では鳴っているのかよく分からず、結婚後に妻ちゃんに指摘され、え?そうなの?鳴ってるの?と初めて知り、その事実に恥ずかしい思いをしたものだ。

自分の身体のどこかから音が鳴っているのに自分では分からない、というのは恥ずかしくもあり、恐怖でもある。

ぴーぴーなのか、ぐーぐーなのか、びびびなのか…。全く以て恐ろしい。周囲からしても、ピーピー言わせているのに全く意に介していないおっさんというものは恐ろしい存在に見えるだろうか。職場で誰も指摘してくれないのは事実だ。

さて、桜咲くこの頃、私は鼻をピーピー鳴らしながら行きつけの補聴器屋さんに行ってきた。

そこでOticonのインテント1を1週間程お借りできたので、以下に試聴レポートをまとめたい。

インテントはOticonの旗艦モデル

インテントは2024年発売、世界初4Dセンサーが搭載されたOticon社のフラッグシップモデルである。4Dセンサーにより装着者の頭の動きを検知することで、装着者が何を聞きたがっているのか、その意図を読み取り装着者に最適な音を届けることを可能としている。「intentインテント」は和訳すると「意図」だそうな。なるほど。

4Dセンサーで意図を汲み取る

Oticonジャパンの公式サイトでは、4Dセンサーを「じぶんセンサー」とし、下記の4つのセンサーで装用者の「したい」こと、「聞きたい」ことを検知する、と説明している。

音響環境
ユーザーの周囲360度の音の情景の詳細を収集。音の情景は同一の環境の中でも、また環境や状況の変化に伴っても変わる。

頭部の動き
ユーザーが頭をどのように動かしているかあるいは頭の動きがあるかを検知し、その動きからコミュニケーションの状況を理解する。

身体の動き
物理的な身体の動きに反応して、空間認識に関するサポートを増やす必要性があるかの予測を行う。

会話活動
会話が行われているかどうかをモニターし、その情報をシステムに伝え、会話音声を優先的に処理するように指示する。

インテントには下記のクラスがある

以前はクラス1.2.3までだったのに対して、インテントはクラス4まで追加された。インテントの効力を十分に得たいのであれば1.2を選択したいところだ。

クラス雑音抑制4Dセンサー
Intent 1最強 (12dB 抑制) フル搭載
Intent 2強力 (10dB 抑制) フル搭載
Intent 3標準 (8dB 抑制)非搭載
Intent 4基本 (6dB 抑制)非搭載

尚、今回借り受けたクラスは最上位の「intent1」である。

前回、Phonakインフィニオを試聴しているため、それとの比較検証もしたいが、それはまた次回とし、今回は今の相棒「Oticonオープン1」との比較検証としたい。

今の相棒「Oticonオープン1」は革新的だった

私の今の相棒「オープン1」は2016年に発売されたモデルで、360°の音を拾うという「オープンサウンドナビゲーター」システムが注目されたモデルである。

それまでの補聴器は「指向性」を有し、背面や横からの音を抑え正面の音を聞き取りやすくするのが常識だった。それをOticon社は「後ろからの車に気づかず危ないじゃないか!…そうだ!健聴者と同じく周囲360°の音を聞こえるようにしよう!その方が安全だし脳にとっても非常に良い!」と訴え、オープンシリーズを発表した。

「オープン」の名前には指向性からの解放、とかその様な意味が込められている。

ただ、このコンセプトを初めて聞いた時、私はどうにも引っかかったのを覚えている。「指向性」という技術は補聴器の進化として獲得されたものなのに、Oticonはその技術を搭載せず、全方向拾いっぱなし?それって進化じゃなくて退化?と疑問を感じたものだ。

その疑問に対してOticonは「1秒間に100回以上周囲360°を常にスキャンし、ノイズと判断した方向の音だけをピンポイントで音量を下げる処理を行っている」とのこと。指向性の進化版ということである。当時としてはこれは大変革新的な技術だった。

私の耳に「オープン」は合わなかった

では、実際にこの2016年当時の技術の粋、「オープンサウンドナビゲーター」はどのように聞こえただろうか。
結果として、度々申し上げている通り、私の耳は惨敗であった。

Oticonの提唱している「音は脳が聞いている」というコンセプトに対して、私の脳は「NO!」を突きつけたのだ。…脳だけに。

Oticonは「耳から入る音情報は脳が処理することから、補聴器で制限するものではなく、全て届けることで脳を活性化させる」と提唱していたが、ひとつ大事なことを見誤っているんじゃないか。

そう、私には「カクテルパーティ効果」が働かないということだ。これは多くの難聴者が訴える事象でもある。

私の「カクテルパーティ効果」

騒がしいカクテルパーティーはこんな感じ?
AdobeSTOCK

カクテルパーティ効果という、なんだかおしゃれな効果があるのはご存知かと思う。「ガヤガヤした騒音の中でも、自分が興味のある音(特に自分の名前や、目の前の人の話)だけを選び取って聴くことができる脳の能力」とされている。パーティ会場のように多くの人が同時に話している場所でも会話が成立するのは、耳が音を拾うからではなく、「脳」が不要な音を捨て、聴きたい音にピントを合わせているからなんだとか。

この能力、難聴者にとっては「チート能力」だ。

難聴も重度になるほど、この能力は欠落していき、脳が音を処理しきれなくなってしまう場合がある。私の脳はそうだ。

人が集まる場所に行くと、全ての音が拾われてしまい、聞きたい音や声が全く聞き取れなくなる。私はオープン1を手に入れてからというものの、ほとんどの宴会等を参加しないようにしてきた。みんなが普通に会話している中、私だけがむっつりと黙ってしまい、まるで社会不適合者になってしまったかのような、そんな何とも悔しい気分しか味わってこなかったのだ。

もちろんオープン1以前の指向性を有した補聴器の際も同じ様なものだったが、オープン1は更にうるさく感じたのだ。

いや、オープン1は悪くない。

私がよく考えもせずにオープン1を求めてしまったのが悪い。

では「Oticonインテント」はどうなのよ

さて、Oticonはインテントになっても変わらず、360°全方位の音を拾うというコンセプトを継承している。

ただ、AI搭載により雑音抑制が強化され、更には前記の通り4Dセンサーによる装着者の意図を汲み取る仕組みも追加されている。

その効果はどんなもんだろうか。私の退化したカクテルパーティちゃんを補完すべく、インテントがその働きを代行してくれるだろうか。

宴会の席など相当に騒がしい場所には行けなかったが、ショッピングモールや体育館、レストランなどの騒々しい環境でインテントを試聴することができた。

まずは見た目から入りたい

Oticonインテントをさっそくおっさんの耳に装着してみた。

耳輪からほとんどはみ出さない
おっさんを斜め後ろから見た図

そんなに大きくなく、耳輪の中に収まる範囲であるのがお分かりいただけるだろうか。

撮影を失念してしまったが、黒縁メガネの収まりもそんなに悪くなかった。

今の相棒、オープン1と比較してもそこまで大きさが変わる印象はないが、明らかに重さは違った。ずっしりと重く感じる。だが、その重さは耳の上に乗せると気になることはない。

左:私愛用のOticonオープン1
右:Oticonインテント1

デザインも割とエッジを意識した印象でプロダクトデザインの流行りを抑えている印象だ。これは私の好みである。

騒々しい体育館にて、うるさいが聞き取りは容易かも

声が響きやすい体育館のイメージ
AdobeSTOCK

息子と私、親子揃って所属しているスポーツ団体がある。身バレを防ぐため詳細は省くが、そのスポーツは体育館や武道館など屋内で行われる個人競技だ。今回も練習に参加する機会があったので、さっそくインテントを装着して検証してみた。その際、たまたま隣のエリアでは我々とは別の団体、剣道の団体が練習していて、ときたま打突の音が相当鳴り響いていた。しかも我々のところは幼少の子が何人か居て、その子たちは練習お構い無しに勝手にキャーキャーと騒いでいる。

そんななかなかに騒々しい環境であったが、インテントによって非常に良く音声を聞き取れたと思う。

インテントは360°周囲の音環境を無理に抑えることなく、自然にそれらを耳に届ける設定になっている。事実、周囲のうるささは抑制されている印象をあまり感じなかった。だがそれでも、私が聞きたいと思った対象の声を聞き取り理解することができた。

例えば最初の代表者のあいさつや、練習時の合間の子供たちの話し声などだ。

遠方に居るとそれは聞き取りは無理だが、近くに寄って話し掛けてくる子供たちと普通にコミュニケーションを取ることができた。

騒々しい中でも360°の音を拾いつつ言葉がはっきりと聞こえる。

そして、それらの音処理について不自然さを感じることもなく、心地よくうるささを楽しめた。

ショッピングモールでもいい感じだった

フードコートのイメージ
AdobeSTOCK

さて、妻と息子を率いて近くのショッピングモールに行ってみた。

週末のショッピングモールともなると、人が大勢集まり非常にガヤガヤする。今の相棒、オープン1では全く歯が立たない環境である。

そん中、インテント1では、隣の妻と会話を楽しめたのには驚いた。

途中モール内にあるペットショップでどうしてもネコを抱っこしたいと妻が言うので、その代償として店員の長いネコ話を受けたのだが、うるさい中でも聞き取りが出来た。オープンでも同じ状況があったが、店員の声はほとんど聞き取れないのだ。

そして、難易度MAXとも言える環境、キッズコーナーで未就学児たちがワイワイと遊んでいる付近で、妻と会話を試みたが、まあ聞き取りは可能だった。

そして何よりも総じて言えることは、自分の声がはっきりと聞こえたということ。オープン1との比較になってしまうのだが、オープン1では騒々しい箇所では自分の声が聞き取れないという事態にいつも直面していたのだ。それは空間に対して自分の声がどの様に響いているかわからないということ。そうなると私の声は騒音の中に吸い込まれ、相手に届かなくなってしまう。だが、インテントでは明瞭に自分の声が聞こえた。これは大いなる進歩だ。声のコントロールが容易となり、相手にも届く。本当に嬉しかった。

車の中にて本領発揮

田舎では車が必需品だ。車がないと日用品の買い物も困難になる。

そんな車社会では車内のコミュニケーションも重視される。インテントを装着し、後部座席に座る妻と息子とで会話を試みた。結果、ロードノイズやエアコンの音に負けず、二人の声が明瞭に良く聞き取れた。これはショッピングモールと違い、雑音と声の分離が容易な環境と思われる。

また、あえてエアコンの送風を最大にし、YouTubeで見つけた、どこかの駅の雑踏音をひたすら流すという意味わからん動画をスマホのスピーカーから流し、その中で車載ラジオの内容を理解できるかテストしてみた。結果、まあ聞き取りが可能であった。

会議室でも問題なかった

今回もビジネスマンらしく朝会議に参加し、聞き取りの状況を確認してみた。

肌寒い日の朝イチなのでエアコンフル稼働状態につき送風音もうるさい。そんな中でインテントはしっかりと役割を果たし、みんなの声を明瞭に私まで届けてくれた。これは車の中の環境と似ているかも知れない。

ZENPEにとっても負担が少ない

これは重要な話である。我々、前庭水管拡大症は聴力低下時にめまいを誘発することが多い。それはその症状からの聴力変化に限らず、補聴器の音量を急激に変える、雑音抑制が強力に働くなどの人工的な音空間の変化に対しても敏感に反応し、めまいを誘発してしまうことがある。

Oticonインテントを装着している間、私の場合はそのような不快な気分を味わうことは一切なかった。

前述の通り、雑音抑制などの機能はシームレスになめらかに行われるため、私自身、そのことをほとんど意識できず、めまいを誘発する要因になりえなかったのだ。

これは本当に良いことだと思う。

まとめ…インテントはイイ!

インテントのAIによる雑音抑制や4Dセンサーは自然に機能するため、今回の試聴において、その効果をはっきりと感じることは難しかった。

それでも、それぞれの環境において聞き取り能力が向上しているのは確かだ。騒々しい環境、静かな環境、エアコンなどの連続的な雑音、そんな様々なシチュエーションにおいて、いつのまにか会話が聞き取りやすくなっていたのを感じた。

そして、それらはあまりにも自然に機能しているのに驚かされる。これはOticonが最も大切にしているコンセプト「脳に負担を掛けない」ことにも繋がる。

音環境をごりごり操作することは脳への負担が大きく、装用者にとってストレスフルな日常となってしまうのだ。

インテントは音環境を歪ませることがほとんどなく、うるさいものはうるさく自然に感じられ、その中でも言葉が明瞭に聞き取れた。

音質もオープン1とほぼ一緒であり、何も違和感なく装用できた。

妻ちゃんに報告

我が家のサイフは妻ちゃんが握っている。

妻ちゃんは日々ラップトップの前に座り、あらゆる収支をエクセルに入力、住宅ローンの返済シミュレーションから投資までとあれこれ余念がない。私のおこづかいはあらゆる状況を鑑みて算出された結果に基づくもので、なかなかに増量も訴えづらい。

妻ちゃんのメガネに映る棒グラフやら折れ線グラフ。

ターーーーン!・・・とエンターキーが鳴り響き、私と息子はビクッとする。

そんな妻ちゃんに、補聴器購入に向けて私はプレゼンを試みた。

あまり刺激しないように、簡素に。

うぇーい妻ちゃんwww
やってるね!まったくムダ使い多くて疲れちゃうよね?
んでさー、今度はオーティコンってところの補聴器なんだけどさ。。。

妻ちゃん

ターーーン!!

インテントってのが。。。

妻ちゃん

タン!ターーーン!!

どうやら、忙しいようである。

次の記事は以前に試聴したPhonakインフィニオと、今回のOticonインテントの比較検証をお送りしたい。