おっさん、補聴器を買う4「Phonakインフィニオ」vs「Oticonインテント」

補聴器を買うおっさんの独り言

  • ※本記事は、前庭水管拡大症・ペンドレッド症候群の当事者である一ユーザーが、自身の生活実感に基づいて執筆したものです。 記載されている製品の性能や価格に関する情報は、執筆時点での個人の調査および主観に基づくものであり、メーカー公式の見解や医学的根拠を保証するものではありません。あらかじめご了承ください。
  • ※当会では、特定のメーカーを推奨するものではありませんが、こうしたユーザーの生の声が、これからの聴覚支援技術の発展や普及に繋がることを願っています。

Phonakインフィニオ90.70(Phonak infinio90.70)とOticonインテント1(Oticon intent1)を立て続けに試聴したので比較レビューをお届けしたい。

なぜ、この2つを比較検証したかについては、この2つが世界シェアナンバー1とナンバー2を誇る2大メーカーのフラッグシップモデルであるからだ。

Phonakインフィニオ
Oticonインテント

尚、Oticonは小型耳あな式(CIC)補聴器、OticonZEAL(ジール)を2026年3月に日本国内で発表している。Oticonとしてはこのジールが最新モデルとなるが、これはインテントの機能と比較しても、4Dセンサー(じぶんセンサー)が搭載されていないなど、重要な機能が削ぎ落とされていることに注意したい。

Oticon ZEAL

見た感じ、ウェアラブルデバイス感が増し非常にクールな外観で私の好みである。このジールもいつか試聴出来たらと考えているが、私の聴力では出力が足りず、推奨されない模様…残念!

AIはどちらも優秀

さて、AIの比較から入ろうか。厳密に言うと補聴器に搭載されているAIは本当にAIなのか、そもそも何を以てAIなのかを論じたいところだが、それは割愛。また後日まとめよう。

Phonakインフィニオ
Phonakインフィニオ搭載のAIは非常に優秀であり強力だった。騒がしい環境において素晴らしい効果を発揮してくれた。背景の不要な雑音は遠のき、会話だけが明瞭にピックアップされる。最上位クラスの90ではそれらの機能がゴリゴリに働く。環境音が入ってきたーと思うと、そのあと瞬時に環境音が遮断され会話のみをフォーカスしたりなど、せわしなく一所懸命にAIが処理しているのを感じることができる。しかし、それらの処理は音空間が再構築されるため、明らかにデジタルな質感を強く感じた。そして、自分の意図とは関係なしにAIが自ら最適解を求め音を選別してしまうのは、高性能ゆえに少々課題に感じた。

Oticonインテント
Oticonインテントはできる限り自然な音環境をキープし、その中で最大限に会話を浮かび上がらせることを得意としている印象だ。Phonakインフィニオがゴリゴリの力押しであった印象に対して、Oticonインテントは寄り添いあまり干渉しない印象だ。かと言って全く干渉しないわけでもなさそうで、私の古い相棒、Oticonオープン1と比較すると明確に聞き取りが向上しているのが感じられる。AIの主張は控えめで、気づいたら自然に聞き取りが向上している、といった感覚であった。

結局のところ好みの問題であると思うが、ただ私自身ZENPEとして前庭水管拡大症による症状がある以上、Phonakインフィニオについては、その強力な機能に対してめまいを感じることが多々あった。私のような疾患の特性上、急激な音空間の変化に敏感に反応してしまったのかもしれない。残念ながら装着は長続きせず、クラス90を二週間試すつもりが実際のところ2、3日で断念し、早々にクラスダウンとして70に切り替えてもらったのだ。70に切り替えたところ、思ったよりもAIはマイルドになり、私にとって最適なインフィニオになってくれた。

それに対してOticonインテントのAIは何かの干渉を行っているといったことがほとんど感じられなく、音空間は安定的で穏やかだった。それは私の疾患に対しても優しく、疲れにくく感じた。

PhonakとOticonは現在の補聴器界をけん引している二大ブランドであることから、各ブランドのAIの方向性については、補聴器を購入する上で重視したい項目だ。それぞれに良いところがある。

騒がしい所はPhonakインフィニオ

これはPhonakインフィニオに軍配が上がる。インフィニオのAIは今回の検証において特に複雑な音環境であったと思われる環境、「ゲームセンターが隣接するフードコートで子供や親たちと会議」において大変な活躍を見せてくれた。背景の要らない雑音を強力に抑え込み、会話だけをピックアップする。この機能は大変に素晴らしいと感じた。

Oticonインテントは自然な音環境を維持するためかPhonakインフィニオほどに明瞭に聞き取ることは難しいだろう。

自分の声が聞こえるか?

そして、上記の環境において大事なのは自分の声の聞こえ方だ。Phonakインフィニオは残念ながら自分の声も雑音と判断したのか聞こえなくなってしまうことがあった。

一方でOticonインテントは驚くほどに自分の声がよく聞き取れた。

もしかしたら声質も関係しているのかも知れない。私の声はよく聞き返されるので、雑音みたいな声質なのかも知れない。

静かな場所ではOticonインテント

Phonakインフィニオは静かな場所でも音に対する干渉が行われ、人工的な声となり私にはむしろ聞き取りが難しくなってしまうことが多々あった。会議において、そして自宅において、時々相手が何を言っているのか聞き取れないことがあったのだ。突発的な笑い声も雑音と判断されるのか、即座に消去対象となるのは不思議な感覚だった。

Oticonインテントは静かな場所においても自然な干渉が行われ会話が楽しめた

ただこれは調整していけば双方ともに向上する可能性はあると思う。

車の中やエアコン下ではどっちもイイ

どちらも良好だが、Phonakインフィニオに軍配が上がるかも。雑音と音声の区別がつきやすいからだと思う。このような環境でこそ、インフィニオは本領を発揮するのかもしれない。ただ、やはり人工的な音になることは変わらない。そして、雑音抑制時に、音声本体まで何らかの抑制が掛かっているのは事実。聞こえるが違和感を覚えることがあった。

Oticonインテントは若干ロードノイズ等の背景音に声が埋もれることがあるが、これは健聴者の聞こえ方と同じなのかも知れないと感じる。インテントは自然な聞き取りであった。

風切り音はOticonインテント

風切り音は補聴器ユーザーなら共通して悩ましい問題であろうか。戸外において聞き取りを阻む大きな障壁だ。

Phonakインフィニオは強力にこの風切り音に対して反応を示し、途端に音空間が狭められる印象があった。だが残念ながら会話さえも聞こえなくなるということが多々あった。

対してOticonインテントは不自然にならず自然に風切り音を抑えてくれたのには驚いた。

強力なのはPhonakインフィニオ、自然なのはOticonインテント。明確に処理に違いが感じられた。

Bluetoothといっても同じではない

補聴器にBluetoothが搭載されることで、補聴器は初めて補聴以上の付加価値が見いだされたと思う。ただの補聴器がウェアラブルデバイスに進化したのだ。しかも、周囲にその使用を意識させることもない。その様な技術進歩の恩恵に我々補聴器ユーザーは遠慮なくあやかるべきだ。

そして、今回のPhonakインフィニオとOticonインテントにはBluetoothの規格に大きな違いがあった。

Phonakインフィニオ
Phonakインフィニオは「Bluetooth Classic」を主軸にした補聴器である。
Bluetooth Classicは一般的なワイヤレスイヤホンと同じ通信方式であり、汎用性が非常に高い。スマホやパソコン、古いBluetooth搭載機器など相手を選ばず直接つながることが可能だ。そのため自宅のノートパソコンやテレビにも接続でき、ワイヤレスヘッドホンのように使用できた。
なお将来的にはLE AudioやAuracastへの対応も予定された設計となっているが、現時点(2026年4月)ではまだ有効化されていない。

Oticonインテント
Oticonインテントは「Bluetooth LE Audio」を中心とした補聴器である。
LE Audioは今後普及が見込まれている「Auracast(オーラキャスト)」に対応している点が大きな特徴だ。駅や空港、映画館、美術館など公共施設での音声配信を直接受信できる可能性があり、アナウンスの聞き取り改善が期待されている。また低消費電力で長時間使用に向く設計となっている。
一方でLE Audio送信に対応していない従来のパソコンやテレビとは直接接続できない場合がある。事実私のノートパソコンやテレビには接続不可であった。

MFi / ASHA
さらにOticonは「MFi」と「ASHA」に対応している。
MFi(Made for iPhone)およびASHA(Androidの補聴器ストリーミング規格)はスマートフォンが補聴器を専用機器として認識する通信方式であり、OS側から音量調整や機能操作が行える。これは日常の操作性に大きく影響する部分である。

操作性はずいぶん違う

Phonakインフィニオで少々残念に感じたのは、iPhoneやAndroid上では普通のヘッドホンとして扱われてしまうことだ。

しかもヘッドホンとしてストリーミングを楽しんでいる際、補聴器が拾う環境音に対してAIは何も介入せずそのままの音を入れてしまう。そのため、ストリーミングの音声に対してエアコンなどの雑音が強く混ざる印象になってしまった。

私のiPhone上での経験だが、Youtubeでストリーミングを楽しんでいる際、エアコンの音がうるさく感じたので補聴器からの環境音を消去したくなった。そこで、補聴器本体についているボタンで、環境音に対して音量調整を試みたのだが、環境音と一緒にストリーミング音量も調整されてしまった

では補聴器のボリュームを下げてからストリーミングを再生すれば良いのかと思いやってみたが、なぜかストリーミングが始まった瞬間に補聴器のボリュームがリセットされてしまう。

ではどうしたら良いのかというと、iPhoneにインストールした「MyPhonak」上で、「ストリーミング音:環境音」の比率を変更することで対応することになるそうだ。

ただ、この比率を操作する場合、ストリーミングが聞こえている状態で行わないと、その調整バーが表示されないという仕様になっている。仕方ないので、バックグラウンド再生可能なアプリで適当に何かを再生した状態でMyPhonakを開き、ようやく表示されるその調整バーで比率を変更する形になる。

いちいちこの手順を踏まなければならず面倒に感じた。

そして、この調整バーの比率を一度変更すると、ストリーミング以外でもこの調整が継承されるのが大変厄介だった。

例えば、電話が掛かって来た場合もこの比率調整がそのまま継承されてしまう。ストリーミング10:環境音0の比率にした場合、ストリーミング終了後に自動で環境音は10に戻るのだが、その後に電話が掛かって来ると、この10:0が継承されてしまう。相手の声は聞こえるが、自分の声が聞こえなくなる。これはLINE等アプリの通知音にも継承され、ポップアップが出る度に補聴器の音量が0になる。

非常に悩ましい問題である。

これはヘッドホンとして認識されているから起こる現象なのだろう。MyPhonakの方ではiPhoneから出力された音がストリーミングなのかただのポップアップ音なのか区別がついていない印象だ。

対して、Oticonの補聴器はどうか。これは先述の通り、iPhoneやAndroidに「補聴器」として認識される。iPhone上では「ヒアリングデバイス」と表示され、アイコンもヘッドセットのマークではなく耳のマークになる。

これのメリットは非常に大きく、専用のアプリをインストールしなくともスマホ単体で補聴器の音量や音質の調整が可能となる。そしてPhonakインフィニオでは悩ましく感じた、「ストリーミングと環境音の比率」問題も、別々に調整可能となるため操作が非常に楽だ。ストリーミングの音量調整はスマホ本体で操作し、補聴器が拾う環境音の調整はそのまま補聴器のボタンで調整が可能となる。

この操作方法の方が自然だし、断然楽だ。アプリを開く必要もない。

通話中も通話音量と環境音で別々にその場で調整可能だ。

デザインは重要だ

補聴器はちょっと前までは「隠すもの」として扱われてきた側面もあり、デザイン性について論じるまでもなかったが、昨今の補聴器はおしゃれになってきている。補聴器は隠すものから魅せるものへと、意識が大きく変わってきている

左:Otcionインテント
右:Phonakインフィニオ

Phonakインフィニオの外観デザインは、エッジのないゆるやかな流線型で、ぼってりと肉厚な印象でやや大きなシルエットだ。みかんの一房みたいだ。エッジを加えてしまうと、もっと大きな印象になってしまうだろうからエッジがないのが正解なのかも知れない。しかしその大きさは耳輪からにょっきりとはみ出してしまい、形状からしても「補聴器です」という主張を感じてしまう。※個人の感想です!。

Oticonインテントの外観デザインはフラットやエッジを取り入れたことで工業製品的な印象も加味され、ややスマートな精密機械といった印象だ。大きさはPhonakインフィニオ程にチップを搭載していない都合上、まだ小型で耳輪に適切に隠れるサイズである。

手に持つと、どちらもずっしりと重量を感じられ、チープさは微塵も感じられず高性能な印象だ。

私個人としては補聴器をウェアラブルデバイスとして扱いたくその観点からデザインを見ているが、Oticonインテントの方が好みである。

補聴器のデザインはどんどん見直されていくものと期待され、魅せる補聴器として果敢に攻めたコンセプトが発表されていくのだろう。事実、他のブランドになるが随分と攻めた印象のデザインの補聴器が登場している。このページの最初の方に掲載したOticonジールの外観も随分と攻めたデザインである。小型耳あな式(CIC)補聴器は長らく肌色が主流で、美しくも何ともなかった。これはOticonに限らずPhonakもバートという製品を発表しており、こちらも非常におしゃれだ。

PhonakバートI-R

まとめ

Phonakインフィニオ
「補聴」としての機能のみで見ると、Phonakインフィニオは非常に優秀だと感じた。過去の補聴器もさんざ「雑音抑制」を謳ってきたが、インフィニオで格段にレベルが上がった印象だ。補聴器はここまで進歩したのかと、唸らざるを得ない。

だが、一方で犠牲にしている要素も大きい。

その大きさである。

私の様に黒縁メガネを装用しているとインフィニオは耳輪の外に押し出されてしまうことがある。フレームの細いメガネ必須である。

そして、補聴器にウェアラブルデバイスとしての機能を求める私個人の意見としては、スマホとの親和性に課題を感じてしまう。もっとこう、お互いに譲歩して連携できないものかと、もどかしさを感じてしまった。

Oticonインテント
Oticonインテントだって非常に優秀だ。

Phonakインフィニオと比較すると音空間の歪みはほとんど感じられず、どこまでも自然な音を楽しめる。過去の機種と比較しても雑音抑制のレベルも格段に上がっており十分に満足できるレベルだ。

そして何よりもスマホとの親和性が高く、ウェアラブルデバイスとして本領を発揮するのはOticonインテントの方だろう。

大きさもすっきりとしており個人的には許容できる範囲の大きさに留まっていると感じる。

さて、どちらの補聴器が良いのだろうか。

試聴期間終了後、当然ながらそれらの最新鋭デバイスを補聴器屋さんに返却しなければならない。

そうなると、8年来の旧友とも呼べるいつもの相棒をまた装着することになるのだが、まあ、非常に悲しい気分になるのは理解していただけると思う。少しでも「最高」を味わったらもう昔には戻れないのだ。「やっぱり買い替えない」という選択肢は私の中にはもはや存在しない。

だが、ちょっと待ってほしい。

補聴器は何も今回試聴したトップ2だけでは無い。他にも色々なメーカーがあるではないか。それらを試聴せずして決断できようか。

そうだ、他の補聴器も試してみよう!

そんなわけで妻ちゃんに報告

家に帰宅すると、幸いにも妻ちゃんはのんびりとくつろいでいるようだ。

いつも妻ちゃんに話しかけるタイミングを間違え、なかなか本題に入れなかったが、今回は大丈夫そうだ。きっと私の話を聞いてくれるに違いない。

あまり暗い印象にならないように出来る限り快活さを心掛け、妻ちゃんに話しかけた。

へいへーいwww
ふっふーww
妻ちゃんさぁ!
あのさ!
補聴器2つ試したんだけどさ!

妻ちゃん

ちゃーーーこ!
かわいいねー!

チャコ

にゃー

あのさ!
そんでさ!
他の補聴器も。。。

妻ちゃん

なーーーんてかわいいの!
ちゃこちゃん!

チャコ

にゃー

どうやら今回もタイミングが悪いようだ。

妻ちゃんはチャコが大好きだから仕方ない。

次回はあの国産補聴器を試聴したレポートをお届けしようと思う。